TSUNAMI★★★☆☆

クソ映画を発見・鑑賞するのは映画ファンの隠れた喜びである。
今の映画は相当なことが無い限り、ある程度の品質で整えられている。
だからこそ僕らは求めるのだ。床をぶち抜くような、常識を逸した怪作を。

ということでクソ臭を感じて観に行った「TSUNAMI」。
ところがどっこい。確かにクソの要素もたっぷりあるが、真面目に作っているところもあったり、役者の演技は高水準だったりと随分観れた映画になっている。
それに加え、C級映画ファンの心もがっちり掴むキャラクターを用意している超高校生級(?)の優等生だ。

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舞台は韓国の釜山にあるビーチリゾート、ヘウンデ。(ハワイみたいだ!)
そこに暮らす漁師の人々や、恋人達を中心とした群像劇。

ワケあって想いを伝えられない漁師男。
都会の大学生と恋に落ちる救助隊員。
地域のため、親族を敵に回しながらもリゾート化を推進する地方議員。
いつまでも定職に付かない息子を案じる母。

韓国らしい完成度の高いコメディを随所に織り込みながら、ちょっと悲しいけれど微笑ましいライトなヒューマンドラマが展開する。
特にマンシク(力道山のソル・ギョング)、ヨニ(ハ・ジウォン)の演技が素晴らしく(吹替なので声は口から想像せざるをえないが)、それだけで一本映画を作っても良いのではないかというくらい、なんとも良い気持ちにさせられる。

そう、あの男が来るまでは。

tdu.jpg
その男、TSUNAMI狂につき。

どこかの学者らしいこの人物。
妻子に見捨てられるほど津波が好きらしく、日々津波のことばかり考えている。
この手の学者は地球滅亡系映画には必須要員なのだが、この男は格が違う。
なんと“学者らしいことを何一つ言わない”のだ。
そのわりに気持ちだけは人一倍強いという、理屈の追いつかないキチガイ野郎だ。

再三、周りの人間が
「何故津波がくるのか?説明して欲しい。」
と言ってくれているのに対し、
「メガ津波がくるんだよ!地震が増えてるんだ!なんでわかってくれないんだ!」
という具合で至極ストレートな狂信者ぶりである。

水槽の泡の上を手でバシャンと叩く下りなんかサイコーだ。
もう、どうにかしてメガ津波に来て欲しいという、その一心なのだろう。

その願いが叶ってか、はたまた黒魔術か何かを使ったのかはわからないが、海底の泡がブクブクして、ついに念願のメガ津波が発生する。
嬉々として走り回る学者の姿がなんともすがすがしいではないか!

そして最後には、最高に幸せそうな顔でメガ津波に飲まれ、殉教するのだ。

このTSUNAMIによって、町人をめぐる群像劇は一気に幕を閉じる。
あるものは死に、あるものは間一髪奇跡的に難を逃れてその後に何故か死に、よくわからんやつが生き残る。
このあたり、なんとかして感動ポイントを増やそうという製作陣の下心が見えて楽しい。

今回、頑張れば字幕で観ることも可能だったが、あえて吹替にチャレンジした。
というのもこの映画、“<超>日本語吹替版”とやらを売りにしているらしいのだ。

“<超>日本語吹替版”とはいかに!?
公式ページより引用してみた。

一、パニックの臨場感と人間ドラマを強調するため、
  日本映画最高峰のパニック映画 平成「ゴジラ」の監督陣を監修に迎えます

ゴジラが臨場感と人間ドラマに長けた映画だとは気付かなかった。
とってもアフレコらしい臨場感で、こればかりは吹替の時点でどうにもならんかと。
とりあえずゴジラ監督陣を迎えるという適当さは評価できる。

一、声優にタレントを使いません
流行っているからってその人は使わない、と言う意味だろうか。
タレントという括りでバッサリ切るところが子供じみていて良い。
主題歌はタレントでもOKなのか。

一、正確性だけでなく、耳で聞く違和感を排除し、話し言葉を重視
もう、言ってる意味が良くわからんのだけど・・・。
気持ちだけ伝わってくるあたりがあの学者っぽくて良い。

一、誰が何役なのか、役名をわかりやすく表記します
あの白抜きのカタカナいっぱいのやつか。
台詞が一杯のときに出てくるからしっかり読もうとは思えないし、「●●の弟、△△」とか出されても韓国人のカタカナ名はすぐに記憶できないから結局無視することになる。
それ以前に、台詞で補完されてるから必要ない。
ということで企画倒れな工夫だが、そのまま使用した適当感は、やはり評価できる。

一、劇中の、“絆”“大切な誰かがいるから頑張れる”等といった、人間ドラマの余韻に浸れるよう、その世界観に合った主題歌を使用します
あの唐突なAKB48は、「<超>日本語吹替」の不真面目さがはっきりと伝わってくる完璧チョイスだったと思う。高く評価したい。

一、劇場公開時は、ほぼ100%の劇場で“<超>日本語吹替版”で上映します
ありがたく頂戴させていただきました。

と言うことで誰に勧めたら良いかわからぬ映画である故、是非皆で観てほしい。
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コメント

なんてシニカルなレビューなんだ…w

自分のブログがすごく恥ずかしくなるぐらい、
相変わらずすばらしい文章で引き込まれますね~。
アジア系はほぼ観ないんですが、
これ読んじゃうと観たくなるw
さすがのレビュー…見習いたい!

ところで「超日本語吹き替え」、最近結構よく聞きます。
2回目の「シャッターアイランド」は超吹き替えで観てみましたよ!
全然違いわからなかったけど!

主題歌とか吹き替えと全然関係ないですよね…w
AKBのチョイスと言いゴジラ監督と言い、
本気さをアピールしたいのかB級臭出したいのか、
正直イマイチよくわかりませんw
2010/10/17(日) 21:31:30 | URL | しゅういち #JOOJeKY6[ 編集]
いやいや、適当すぎて苦情が来るんじゃないかと、ちょっと恐わいくらいですよ。
なんプロさんのレビューもいつも楽しみにしてますよ。

アジアもの、面白いっすよ。当たり外れの多さと、監督ごとに何に影響を受けたかわかりやすいのがポイントかと。
日本で有名なタイトル+監督でも「これお涙頂戴のTVドラマじゃん。」みたいなのもいっぱいあるので、最初が大変なんですよね。

<超>日本語吹替ってこれだけじゃなかったんすか。たぶんどうにもなってないんでしょうけど。
吹替えがやってるよ!ってのを宣伝したいんでしょうね。映画ファンだけじゃやってけないでしょうから、しょうがないすわ。
2010/10/17(日) 22:35:20 | URL | オビ湾 #-[ 編集]
まあ、僕は絵が適当すぎですからね…。
オビ湾さんのは軽さがいいですよ!読みやすくて。
でもオビ湾さんに楽しみにしてると言われると、
お世辞でも嬉しいですね。
もう今すぐ会社早退して映画観たいぐらいです。(ダメ

>アジアもの、面白いっすよ。当たり外れの多さと、
>監督ごとに何に影響を受けたかわかりやすいのがポイントかと。

なるほどー。
そういう視点でちょっと今度チョイスしてみます。
ただ、現時点で観たい映画が「TSUTAYA DISCAS」の
予約リストでもう200本超えてるんですよね…(汗
追いつく日は来るんでしょうか。
残酷なシネフィルへの道。
2010/10/18(月) 09:13:07 | URL | しゅういち #JOOJeKY6[ 編集]
リスト200本ですかぁ。
それでは半年後にちょっと思い出してやってください。
2010/10/18(月) 12:44:10 | URL | オビ湾 #-[ 編集]

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