127時間★★★★★

127時間★★★★★
1272.jpg
その右手からこぼれ落としてきた人生を・・・

今年映画界を賑わした話題作「ソーシャルネットワーク」とその監督デヴィッド・フィンチャー。
そのフィンチャー監督による2008年の傑作「ベンジャミン・バトンの数奇な人生」を抜き、その年のオスカー作品賞に輝いたのが「スラムドッグ・ミリオネア」。
「127時間」はその「スラムドッグ・ミリオネア」のダニー・ボイル監督最新作である。


週末のキャニオニングに出かけた青年アーロン・ラルストンは、目的地であるブルージョンに向けて自転車を飛ばしていた。
道中、道に迷っている2人の若い女性のガイドを請負い、地下プールと秘密の飛び込みスポットを教えるなど、存分にアウトドアを楽しむアーロン。
日曜日のパーティーに出席することを約束して2人と別れたアーロンは、再びブルージョンを目指してヒョイヒョイと岩場を飛び越えて行く。

その瞬間、彼に油断があったとは言い切れない…。
ただ現実に、その岩は彼の右腕に重く圧し掛かり、狭く孤独な石の割れ目へと彼を閉じ込めたのだった。

岩は両側の壁の間にすっぽりと収まり、アーロンの右腕はそれ支える形で岩と壁の間に挟まっている。岩は腕に覆いかぶさっているため、その端を削ったところで重みが増していくだけ。
手持ちのビデオカメラで遺書を兼ねた撮影を始めるアーロン。岩と対面し続ける127時間は、まだ始まったばかり…。



スタジアムや通勤の喧騒シーンにグルーヴィーな音楽を被し、画面を割って唐突に始まるオープニングの掴みの良さ。ダニー・ボイル健在である。
一聴すると異様に聴こえる音楽のセレクトも、極めて意味有りげでハイセンスだ。

岩に挟まる前のスポーツライクなシーンが楽しいのはこの監督なら当然かもしれないが、いざ閉じ込められた後もスクリーンから躍動感が失せないのが凄い。場面はひたすら岩の前なのに、まったく飽きの来ない演出が続く。
回想シーンの巧さはスラムドッグで証明済みとは言え、正気を失っていくアーロンの幻視はエモーショナルで、まんまと魅せられてしまった。

いやはや、90分などあっという間だ。
動かないアクション映画とは良く言ったものである。
ジェームズ・フランコの演技はオスカーに相応しく、その切迫した緊張感は観客をガブりと飲み込んでしまう。
自分がこうなったらどうしよう。こんな恐怖に耐えられるだろうか。
そう考えずにはいられない迫力である。


でも、スッと距離をおいて見ると、
生きたい様に生きてきた青年と、永遠のときを刻む岩との運命的な出会いが浮き出てくる。

出発の朝、触れることの出来なかった棚の上の万能ナイフのように、
彼の右手からこぼれ落としてきたものを、
これからの人生で拾い集めるのだ。

脱出が奇跡なのではなく、岩に挟まれたことが奇跡。
目の前にどっかと腰を下ろした岩の優しさに、宇宙を感じる映画だった。
| trackback:0 | commnet:0 | BACK TO TOP |

コメント

コメントする


秘密にする
 

このエントリーのトラックバックURL

これがこのエントリーのトラックバックURLです。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

このエントリーへのトラックバック

プロフィール

海長とオビ湾

Author:海長とオビ湾
motto:物より心
webmaster:ALOHA! Maura Kalusky FANLOG

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

ブログ内検索

比類なきリンク先

このブログをリンクに追加する