紹介:マンハッタンプロジェクト

"GLOBAL POWER STRUGGLE
BEGINS AT DAWN OF ATOMIC AGE"

20世紀、人類は原子爆弾を発明した。
それは科学の偉大な進歩であると同時に、自らを滅ぼすことのできる具体的な火でもあった。
原子爆弾はその後の大国間政治に大きな影響を与え、戦争のあり方をも一変させた。
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これらの原子爆弾開発計画の歴史の中で、最も有名なのがアメリカによるマンハッタン計画である。
当時の大統領であるルーズベルトの承認のもと、プロジェクトは1942年より開始され、1945年には原爆実験を経て開発に成功している。
もちろん原子爆弾の開発を進めていたのはアメリカだけではない。
本作「マンハッタンプロジェクト」はそうした各国の政治的兵器開発競争を取り上げたゲームである。

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ボックス。大きさはアグリコラくらいだと思う。
デザインは20世紀中頃以前のポスターアートを思わせる。良くできたアートワークで、カードやその他コンポーネントをも魅力的に見せている。アートデザインをやらせたらアメリカは強い。

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中身。
軍事機密のため詳しくは教えられないが、全員が共有するメインボードと、それぞれが所有するマイボードが存在する。このゲームはワーカープレイスメントと呼ばれるシステムを採用しているが、ワーカーは良くある木製ではなく、やたら分厚いワーカータイルを使用する。
他、チップが山ほどという感じだ。

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手番になったらまずはメインボードにワーカーを置く。
メインボードはゲーム進行の根幹にかかわる効果があるものが多いのだが、手番中は1ヶ所しかワーカーを置くことが出来ない。ワーカーを置くことでの効果はアウトプットとして置き場の下部にアイコン表示されており、極めてわかりやすい。これはカードの建物などにも共通しており、視認性を含めて大変素晴らしい出来である。

さて、このメインボードで行える作業は以下の通り。
①建物の建築
②建物の修理
③大学で人材スカウト
④天然ウランを採掘する
⑤資金を得る
⑥空軍力を強化する
⑦他国に空襲を行う
⑧スパイを送る
⑨爆弾を設計する
⑩ウラン/プルトニウムを精製する(天然ウランを使用)

これらのアクションを任意で済ませた後、今度は自国の建物に対してワーカープレイスメントを行う。
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自国の建物に置く場合に限り、ワーカーは一度に何ヶ所にでも置いて良い。もちろんそれだけの労働力があればの話である。また余談だが、スパイを送っていれば他のプレイヤーの国の建物にワーカーを送り込むこともできる。
自国の建物の効果はメインボードと大体似通っているが、プルトニウムを精製するためのリアクターやウランの濃縮施設などがやや多めである。
上の写真を見てもらうとわかる通り、建物によってはワーカーの種類(化学者かエンジニアか)を求められるケースもある。

で、こうしてワーカーを置いてくと、その手番中でなくてもいつかは手元にワーカーが無くなってしまう。そうした時、もしくはワーカーを早めに戻したい時は、一手番を消費してワーカーを戻すという手順を踏む。
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これを行った瞬間にメインボードや自分の建物からワーカーが返ってくる。また、自分の建物にいた他プレイヤーのワーカーも帰っていく。(ちなみに契約社員と呼ばれる臨時ワーカーはこの時にストックに戻ってしまうので注意。)
これを行わない限りワーカーは戻ってこないし、ワーカーの置き場所も空かない、というのがミソで、誰がいつワーカーを回収するだろうという目測は勝利するにあたって大変大事な駆け引きどころである。

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さて、このゲームで勝利点になる行動はただ一つ。お金でも空軍力でもなく、爆弾に関する実績のみである。
爆弾の設計書を持った上で、その爆弾生成に必要なワーカーとプルトニウム/ウランを用意すれば、手番中いつでも開発が可能だ。
しかしこの時、プルトニウム爆弾に限ってはカードの下に点数が2種類記載されていることに注意したい。これは何故か。
このプルトニウム爆弾はインプロージョン式という技術を採用している。爆弾の中心におさめられたプルトニウムを、外側に球状に敷き詰めた火薬による爆圧で臨界点に到達させ、核分裂反応を引き起こさせるというものだ。
しかしこの爆圧の計算が大変高度であり、スーパーコンピュータの無かった当時は多くの数学専攻者に膨大な時間をかけて計算をさせたのだという。
もちろん計算が本当に合っているかは爆発させてみないとわからない。だから、そのテストを行うまではプルトニウム爆弾の正当な評価はされないのである。 そこで行うのがインプロージョンテストだ。(インディジョーンズ・クリスタルスカルの王国の冒頭で、インディアナがふっとばされるアレ)

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開発したプルトニウム爆弾を1つ消費し、爆発テストを行う。
これにより開発した爆弾の勝利点は無くなってしまうが、インプロージョンテストを行ったことによる勝利点を得ることが出来、さらに今後はプルトニウム爆弾に記載されている右側の大きな数字を勝利点として換算できるようになるのだ。

ウラン爆弾は効率が悪くとも爆発させるのが比較的容易で、インプロージョンテストを行う必要が無い。しかし天然ウランから濃縮ウランに加工する過程が難しく、多量の電力を消費するので資金を多く消費してしまうというデメリットがある。
いずれの爆弾にしても必要経費を支払うことで爆撃機に搭載し、アクティブにすることで勝利点が追加される。

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また、このゲームの終了条件は誰かが規定の勝利点に達したときであるため、誰か一人が達成しそうになったら空軍による施設破壊でそれを阻止する必要が出てくる。
空軍には戦闘機と爆撃機の2種類があり、戦闘機で相手の空軍を削り、戦闘機が無い国に対しては爆撃機で施設攻撃を行うことが出来る。被害を受けた建物は修理するまで使用することが出来ない。
空軍がなくとも爆弾は作れるが、邪魔されたくないのであれば最低限の戦闘機を準備しておきたい。

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そうこうして規定点を越える点数になったら勝利宣言をするといい。

【評価】
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【所感】
原子爆弾の製造過程とその目的を、うまくデフォルメしてゲーム化していると思います。
プルトニウムで行くかウランで行くか、ワーカーはいつ回収するか、そもそも人材重視か建物重視か、十分な選択肢が用意されています。また、ワーカープレイスにしては置き場所に関するぎすぎす感がないのも特徴かもしれません。ある程度思った通りに行きますが、その分スパイのアクセントが活きている感じがして、悪くないです。
アートワークの良さと、まとまりのあるインターフェースも高評価のポイントでしょう。
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