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アーティスト(94点)

少し前の話だが、映画関連のニューストピックに「3D映画の重要性が明らかに…」という主旨の見出しを見つけた。
記事を読んでみると、興業収入のトップ10が軒並み3D映画であるから、これはやはり3Dは映画にとって重要だ、というのである。「最初から動員が見込める映画を3Dにしただけですよね」という突込みは置いておくとして、実際のところこの記事は「3Dの追加料金は重要だ」ってことが言いたいようだ。まことに馬鹿らしい事実である。

もちろん料金以前の問題として3Dを嫌がる観客も確実におり、その理由は“画面が暗い”とか“目が疲れる”などである。僕自身も3Dが登場したときには“人の想像力をバカにしている”と言ったものだが、これとそっくりの台詞が登場する映画がある。
今年アカデミー作品賞を受賞した「The アーティスト」だ。

◆アーティスト
★★★★★★★★★☆(94点)
アーティスト
だから映画はやめられない

「The アーティスト」は1920年代後半から30年代初頭にかけて起こる、映画界のある一大事件を背景にしたヒューマンドラマである。その一大事件とは、言わずもがな“トーキー時代の到来”だ。
トーキー以前の映画を称してサイレントと呼ぶが、このサイレント時代の俳優というのはSEを使えない縛りの中で様々な努力をしてきた、いわば音無しの専門家(アーティスト)である。史実ではユナイテッドアーティスツを設立したチャップリンやダグラスフェアバンクスが有名だが、まさにそのフェアバンクスをモデルとしたと公言されているのが本作の主人公ジョージ・ヴァレンティンだ。

サイレント映画の大スターであるジョージは、そのアーティストとしてのプライドから、トーキーを新商品として売り出したい製作会社側と衝突してしまう。
「サイレントは芸術だ。自分はアーティストなのだ。」
己を信じて自主制作によるサイレント映画を作ったものの、同日に公開されたトーキー映画に惨敗。彼は次第に人の記憶から遠ざかっていくことになる。

また皮肉なことに、ライバルとなったトーキー映画に主演していたのはジョージが見出した新人俳優のペピー・ミラーだった。劇中のペピーはジョーン・クロフォードを連想するフラッパーでチャーミングな女優として描かれており、トーキー時代の幕開けにふさわしい華やかさを持っている。

この映画は、上昇まっさかりなペピーと、ひたすら人生を下降していくジョージの対比が綺麗に描かれた映画と言える。

こうした大枠のプロットを、アザナヴィシウス監督(覚えにくいですね)はサイレント時代の技術を大いに盛り込んで演出する。俳優の目線、細かな演技はもちろんのこと、カメラアングル、新聞や広告などの小物、5秒に満たない何気ないシーン。劇伴に関しては言わずもがなだ。また、劇中劇を利用して観客の想像力をリードする手法も巧みだ。
しかし、このような映像技術をこれほど落とし込めているという状況が実は現代的で、そのような映画はサイレント時代にも(サイレントを100本も観ていない自分が言うのは説得力に欠けるが)ほとんどなかろうと思う。
つまりその辺は現代人に観易くできているので、サイレントがなんだ、モノクロがなんだという胡散臭い知識が無くてもモウマンタイであり、こうした大衆性は監督も第一に意識しているように感じられる。何せ、映画が最も大衆に愛された時代を描くのだから。

続いて魅力的なキャラクターを演じた2人、いや2人と1匹についてだが、これはもう本当に素晴らしい。
ジョージ役を務めたジャン・デュジャルダンはふんわりした笑顔が最高に気持ち良い俳優である。ふわっと表情を変える温かみのある顔芸には心を溶かす力がある。最高に魅力的だ。
ヒロインを演じたベレニス・ベジョは細身の長身で、大きな口がチャーミングな見返り美人だ。階段シーンでの投げキッスは観賞後も度々脳内再生されたお気に入りシーンである。
そしてこの映画の裏主人公と言っても良い活躍をしたのがワンコのアギー。
そもそも喋らない動物はサイレント向きに違いないが、人間に指示してもこれほど上手くは語れないだろうというレベルの演技。タンタンのスノーウィもマッツァオである。いったいどうやって撮ったのだろう…。
他、ジョン・グッドマンやジェームズクロムウェル等の演技も綺麗に嵌っており、脇はバッチリしまっている。

最後に、僕が最初にこの映画の予告を観た時の印象と、実際に本編を観た時の印象が若干異なったのも付け加えておく。予告の時点ではタップシーンが多かったので、僕は「雨に唄えば」を連想していたのだが、その内容は思いのほか「サンセット大通り」に近かった。というか、ビリーワイルダーだった。おそらく、かなり強烈なリスペクトを持って作られている。そういう心意気ってホントに気持ち良い。一観客として、映画に込められた気持ちは大事にしたいと思う。

さて、冒頭の話に戻すと、僕は3D化された映画は好きじゃない。それはより良いものを作ろうという製作魂よりも、どうやって課金するかという商売っ気の方に目が行ってしまうからだ。
けど、3Dの時代が来ないなんて言えない。
それはトーキー時代の到来とは比べ物にならないほどチープだと思うし、3Dの到来で迷走している俳優も実際のところいないだろう。なんと詰まらぬイベントだろうか。
でも、ペピー・ミラーの様な何かを持った俳優1人で、状況は変わるかもしれない。
どうせ追加の料金を払うのであれば、そうした何かが早く起こってくれと願う事に決めた。「The アーティスト」は僕にとってそんな映画になったようだ。
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コメント

3D映画の弱点は、メガネやろな。メガネあると重くて、わずかのメリットがある天秤が逆方向に傾く。
メガネがないわしにしてみれば、確かに画面は暗くなるけど、3Dでみれるというメリットとどっこいどっこいかな。
ただ、なんでもかんでも3Dにするのは良くない。3Dには3Dにして初めて活きる見せ方ってのがある筈。
今のところアバターはぶっちぎりにしても、ヒューゴも悪くなかった。それ以外は×
3DSもしかり。任天堂はやはり上手い。
ま、3D映画のために使い捨てコンタクトを試してみるのもええんちゃう?
2012/04/11(水) 23:59:20 | URL | あきお #wr80fq92[ 編集]
3Dをまともに使える製作会社が限られてる中で、それを次世代標準みたいにしちゃったわけですからね。僕もアバター、ヒューゴ以外は完全に害悪でしかなかったように思います。
2012/04/12(木) 01:50:08 | URL | 海長とオビ湾 #-[ 編集]
俺的には、3Dより、『タンタンの冒険』のような技術に脅威に感じてる。アニメと実写の境界線が人間の脳では判別できないレベルの映像だったもの。脳って理解できないものは受け付けたがらないのかね、見ていて若干気持ち悪かった。

俺、ジョージになってもいいから、2D見ていたい。
2012/04/12(木) 14:21:46 | URL | 由紀 #-[ 編集]
アクション映画なんかじゃかなり昔から人をCGで代用してるけど、STARWARS EPⅡのジャンゴVSオビ湾もほとんどCGなんだよ。あれ普通に気づかんよ。
2012/04/12(木) 20:15:39 | URL | 海長とオビ湾 #-[ 編集]

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