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愛、アムール(99点)

ミヒャエル・ハネケの新境地に、しばらく言葉を失いました。

◆愛、アムール
★★★★★★★★★☆(99点)
amore.jpg
かくも尊き愛の記憶

パリのアパルトマンで老後を過ごす元音楽教師の夫婦。
娘は独立し、弟子は一流のピアニストとして世界を巡っている。十分に満たされて静かな生活を過ごしている二人に、人生最後の試練が訪れる。
頸動脈狭窄症により妻のアンヌが右半身麻痺に。老夫婦2人による、いわゆる老老介護生活。

弱音一つ漏らすことなく、妻の介護を献身的に行うジョルジュ。
ジョルジュに感謝しながらも、要介護者として憐れまれるのを嫌うアンヌ。
アンヌは実の娘にすら姿を見られるのをためらう。同情の目で自分を見る弟子には、嫌味にも練習曲を弾かせた。
彼女はジョルジュに古いアルバムを持ってこさせると、こう切り出す。
「素晴らしい人生だった。かくも長く、長い人生」
そして言うのである。
「早く終わりにしたいわ」

ジョルジュはアンヌを理解している。
高慢とは言わずとも、長く生きた女性として気品をもって生きたいと願い、屈辱と苛立ちの中で苦しむ妻を理解している。可能な限り彼女を彼女らしく生かしてあげようと努力し、その一方でより現実的な療法を行わずにいること、夫婦の問題として扉を閉じていることに葛藤している。

そうしているうちに2度目の発作が起き、アンヌは自由に会話することもできなくなる。
意識も朦朧とし、時には自分の状態がわからなり、うわごとを口にする。
それでもジョルジュは自分の手で介護を続ける。
様子を見に来る娘に「心配されるのも迷惑だ」と追い返し、昔の思い出話をアンヌに聞かせて笑顔にさせる。二人だけが共有している世界で、ジョルジュは悲しく先細っていく人生を考える。

「痛い。痛い。」
どこが痛いのかもわからないアンヌをなだめ、優しく手をさすりながら昔の思い出を語るジョルジュ。
遠い昔の幼い頃、キャンプのために母と離れて寝泊りをしなければならなかったとき、母は「悲しいことがあったら、星を描いた絵ハガキを送りなさい」と言った。そしてジョルジュは、星を描いたはがきを母に送ったのだった。
静かに話を終えた後、ジョルジュはアンヌの命をおしまいにする。


老老介護の話である以上、この物語のいきつく結末は最初から分かっている。
一見感傷でしか捉えられないような、救いのない話にも思える。
本当にこの映画の話は悲惨でしかないのだろうか?
何十年も人生を共にした夫婦の選択が、本当にそのような悲劇のみで語られようか。

若輩者の自分にもわかるように、ハネケは二つのヒントを言葉にしている。
老いた夫がつらつらと妻に語り出すなんでもない過去の思い出。二つの話はまったく別のものだけど、この映画においては同一の話になっている。

夫が語る一つ目の思い出。幼い頃、初めて一人で映画を見たと時のこと。すごく良い映画で、とても感動したということだけ覚えている。でも、映画の内容は思い出せない。それでも、その時の感動は覚えている。
一つ目のヒントで、人生とは、あいまいな感情の記憶。その積み重ねで出来ているとハネケは言っている。

二つ目の思い出は先に書いた通り、結末を前にして語られる星のはがきの話だ。
何が苦しかったとか、何が悲しかったとか、そんなものは人生においてそれほど重要なことではない。幸せも不幸も、あなたの大切な輝ける記憶の一部であると、そう諭しているように響くのである。

この映画は、愛が現実を救う話なのだ。

そんなもの見たくないという人もいるだろう。そう、見なくてもいい。
この映画は娯楽作品ではない。ハネケが描いてきた芸術作品の、たかが最新作。
ただ、そのフィルムが切り取った夫婦愛の結末には、人生を愛でるヒントが山ほどに詰められているに違いないのだ。
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コメント

あー、もう…
レビュー読んでいるだけで、涙が出ます…

作品もすばらしいのだと思いますが、オビ湾さんの文章力もすばらしいです。
2013/03/24(日) 19:31:53 | URL | 紺碧 #8IgtKjlw[ 編集]
観たその日は心を粉砕され、丸一日ばかし心身の回復に努め、3日目にいつもの3倍の時間をかけて書きましたゆえ!
2013/03/24(日) 21:00:38 | URL | オビ湾 #-[ 編集]

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