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ザ・マスター(95点)、容疑者ホアキンフェニックス(40点)、かぞくのくに(65点)

◆ザ・マスター
★★★★★★★★★☆(95点)
ashfoxandkylie.jpg
アイデンティティと魂の自由

第二次大戦の後遺症でPTSDを患っている帰還兵のフレディ。
病の影響で社会に溶け込むことができず、戦中の逃避行動であった密造酒づくりだけが彼の心のよりどころだ。
そんな放浪のフレディがパーティー会場に乱入することで出会ったのが、ザ・マスターこと新興宗教団体のグル(ホフマン)。
ホフマンはプロセシングという名の退行催眠を行うことで、魂が肉体を渡り生きている事、その精神と記憶は時代を超越して存在し続けることを説いており、戦後の感情不安定な世の中で一定の支持、または非難を受ける有名人である。

フレディはホフマンの人柄に惹かれて彼の旅に同行するようになる。
ホフマンはフレディを救済するために同行を許しているはずだが、教えを聞くこともせず自分の本心でしか生きられないフレディに対し、次第に羨望にも似た複雑な感情を抱くようになる。

それに加え、ホフマンの妻であり、彼を管理し、教団を裏でまとめる役割として登場するのがエイミーアダムスである。(名前が出なかった気がするのが意味ありげだ)
彼女はホフマンが支配できないフレディとその人格を嫌悪しており、幾度かのチャンスは与えるものの、最終的には彼を憎悪しているようにも見える。

彼女にはフレディとホフマンの間で起こっていることが理解できない。
ホフマンの生き方は現世におけるアイデンティティからの逃避であり、フレディの生き方はひたすらに惨めなアイデンティティを抱えながら、それでも生きる生物の本能である。
魂の自然を体現したようなフレディに、ホフマンは自分の道を失い始め、彼を求めることで心の安寧を得ようとしているかのようだ。

やがてフレディはホフマンのもとを離れる。
ホフマンは彼を愛してくれるが、ホフマンの思想は彼を救うものではないからだ。

ペニスを握ってマスターを管理する妻。アイデンティティの放棄から目を覚まされるマスター。始末に負えないアイデンティティと行く当てのない放浪を続ける中年男。
テーマに対するデフォルメを行わず、難解なまま解放される熱き魂の静かな旋律。

巨大化した教団の英国支部で再開した二人の、友情とも嫉妬とも形容しがたいやり取りに、監督の底知れぬ人間研究の片鱗を観る。

さすが、という言葉しか出てこないPTAの最新作。
全てのシーンに意味があり、その意味を具現化したかのような映像美を拝む。
その映像をバックアップするジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)の劇伴も「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」と同様に歪で印象的で、耳に残る。

上記の映像・劇伴に加え、超優秀な俳優陣がプロットが無いに等しい物語を作品に昇華する。
猫背で口唇裂で、常に無愛想でありながら激しい感情を持つフレディ。
性格を並べるだけでも難しいこの役を、完璧以上に演じきったホアキン・フェニックスが素晴らしい。言葉に形容できない怪演である。
彼が主演男優賞を取れなかったのは、この後にレビューする「容疑者ホアキン・フェニックス」でおふざけが過ぎたからとしか思えない。
ホフマンはいつも通りと言えばそれまでだが、頭が良くて内面に問題のある人間をやらせたら右に出るものが無い。
エイミーアダムスの演出する女世界は最早おとこが物申すところではなかろう。

あまりに膨大かつ複雑なテーマの数々。
この作品をうまくデフォルメして伝えることは難しい。
まったく万人向けではないが、気になったら是非映画館で鑑賞してほしい。


◆容疑者 ホアキン・フェニックス
★★★★☆☆☆☆☆☆(40点)
hoakin.jpg
どうでもいいが面白くない。

「ザ・マスター」で怪演したホアキン・フェニックスが業界とメディアを巻き込んでまで実行した大嘘引退ドキュメンタリー。

「グラディエーター」と「サイン」でそこそこのスターポジションについた彼が、もう映画には出演しないと言い始めて、その後どういうわけか「ラッパーになる」と宣言するわけのわからない話。
その後はほぼ全編通して、愚痴みたいな歌詞のラップを聞き続けることになる。
構成としては「大嘘つきます」ということをベースにするのではなく、「ホアキンフェニックスの一生にはこういうパラレル人生が有り得た」というスタンスで作られている。
が、別にそれが面白いかっちゅうと、痛い姿を見続けるだけなのでこれと言って何か感じるものがあるでもない。
一番しらけちゃうポイントは、"ラッパーになる動機がなさすぎる"ことだ。
だから大嘘つこうにもプロデューサー連中からは信用されていない。
もちょっと、そこはしっかりしとかないとねーとは思った。でもあんまりこの実験には興味がないのでどっちでもいい。

◆かぞくのくに
★★★★★★☆☆☆☆(65点)
kazoku.jpg
あなたが大嫌いなあの国で

在日朝鮮人の家族のもとに、北朝鮮からの帰宅困難者となっていた息子(アラタ)が帰ってくる。脳腫瘍の治療を行うための、極秘入国だ。
アラタは昔の友人と同窓会をしたり、妹と水入らずのデートをしたりして楽しむが、脳腫瘍の方は結構重くて、3か月という限られた帰国期間の中では治療が難しかった。
そうこうしているうちに、期間を大幅に早めての帰国命令が北朝鮮から届く。北朝鮮の生活に慣れているアラタは、突然の凶報にも動じないが、家族は怒り心頭。
しかしそれはお国の決める事、個人の想いなど関係なくなすべきことはなされ、残されるものは祖国の良心を信じるのみという結末に至る。
アラタの監視人としてついてきた兄ちゃんが映画の肝になっており「あなたが大嫌いなあの国で、自分も、アラタも、死ぬまで生きるんだ。」
のセリフには一瞬胸がグラついた。

今年のキネ旬1位の注目作ではあるが、はっきりいって各段面白いわけではない。
意義のある社会的テーマと、しっかりした脚本、実力派俳優の好演、という、邦画ではなかなか揃い難い要素を満たしているところが評価されたポイントだろう。
ただ、アカデミー外国語映画賞に選出するには内容もインパクトも足りないと思う。社会問題としても諸外国から見れば手緩いし、共感も得にくいものではなかったか。
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コメント

ザ・マスターの内容について
こんにちは。ちょっと気になったもので書かかかせて頂きますね。
マスターはいくつかの治療を行っていましたが、
プロセシングは、退行催眠ではなく、強い言葉で同じ質問を繰り返す談話療法のことですよ。
退行催眠は、年配の女性に行っていましたね。
2013/04/03(水) 22:33:31 | URL | 胡桃 #-[ 編集]
ああ、あの部分だけをプロセシングというんですね。ありがとうございます。
2013/04/03(水) 23:26:13 | URL | オビ湾 #-[ 編集]

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