スラムドッグ$ミリオネア

魅せる映画ってのはこういう映画のことを言う。
想像以上にド派手な映画「スラムドッグ$ミリオネア」は巧みな編集技術と映像感覚、さらにはエッジの利いた素晴らしい音響で、オスカーにふさわしい魅力を持った作品だった。
※以下、ネタバレ注意


ご存知の通り、「スラムドッグ$ミリオネア」はスラム育ちの貧困層である青年が、いかにしてミリオネアの難問を解くことができたのか、彼の波乱万丈な半生をたどりながら追っていく物語。
根底には幼い日に出会った運命の女の子を真摯に思い続けるラブストーリーがあるものの、それを感じさせないくらいの迫力で各エピソードが語られる。スリルあるこれらのシーンを作り上げているのは巧みなカット編集と音圧のある効果音や劇伴だろう。とてもダイナミックだ。

特に感動したのは、少年期・青年期(取調べ)・青年期(クイズ番組収録)という大きく3つの場面をドラマチックに織り交ぜながら進んでいく脚本だ。こういう時間や場所が交差する物語は監督の手腕が問われるところなのだが、もうこれは満点クラス。監督と脚本の相性は相当良かったに違いない。

ただしストーリー展開にはやや“出来すぎ”感があるのは否めない。
パワフルだが人間臭い物語を、どうやって奇跡の物語に昇華させるか。
非常に難しいところだったとは思うのだが、なんにせよ作りこまれたインドのリアリティに物語のリアリティがついていかない。デフォルメは映画の肝だが、この作品の場合最後までどっちつかずなところがあった。
でもどうやらコレは僕の考えすぎのようで、最後のインドダンスを観たあたりで監督のニヤリとする姿が想像できた。この曲者監督はどちらでもない映画を作りやがったのだ。ほんと曲者だよ。

クイズの内容と主人公のエピソードがもうちょっとうまく絡むと良かったけど、100点満点中85点は取る映画。休日に暇なら観るべし。去年のゼア・ウィル・ビーには遠く及ばずとも、素晴らしい作品であることに違いは無い。

急速な近代化を遂げたインドのムンバイ。それでも貧しいものは貧しく、不幸なものは不幸である。
実直な青年が成し遂げた奇跡は、確かに監督が意図したとおりに輝いて見える。
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