3時10分、決断の時★★★★★

名前の通り、名作西部劇「決断の3時10分」のリメイク。
旧作はグレン・フォードの名演が光る心理戦メインの重厚な作りだったが、これをラッセル・クロウとクリスチャン・ベイルが演じるとどうなるか。まったくもって楽しみな一作ということである。

最近珍しい西部劇と言えば先日レビュー済みのエド・ハリス「アパルーサの決闘」だろう。
「アパルーサの決闘」がディティールに凝ったマニアなつくりになっていたのと比較して、「3時10分決断の時」は細かさこそ無かったが、スリリングな銃撃戦とストーリー展開が観るものを飽きさせない素晴らしい映画であった。

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(2009/11/20)
ラッセル・クロウクリスチャン・ベイル

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クリスチャン・ベイル演じるは、片足を失い、家族から尊敬されないどころか、冷たい視線に晒されているダメな西部男、ダン。農場を守るための借金が募り、このままでは土地を失ってしまう。
意を決したダンは、ギャングのボス(ラッセル・クロウ)を列車に乗せるまでの護送に志願する。
成功すれば200ドル、だが、ボス奪還に執念を燃やす部下がすぐそこまで迫っている。

依頼遂行が絶望的になったそのとき、ダンの本当の決意が姿を現す。
ダンがこの旅で本当に守りたかったもの。
愛する人に苦しい生活をさせている。息子には立派な父親の背中を見せてやらねばならない。
彼が守りたかったのは、他ならぬ一丁前の家族像そのものである。

命を張ってまでそれを得ようとするその男気に、果たして敵も味方もあろうものか。

西部劇は勧善懲悪が当たり前だというイメージがあるかもしれない。だが、実際の西部劇は悪役の心理も正義役の弱さもしっかりと描いていることが少なくない。敵味方双方が垣間見せる渋さの奥に、ド派手な表面に決して現れないドラマがある。それが西部劇だ。

この映画はリメイクに際して“静けさに潜む迫力と渋さ”は失ったかもしれない。
そもそも旧作はこれほどドンパチに重きを置いていないし、息子が登場することで少なからず趣旨も変わっている。
だがどうだろう、この感覚は往年の西部劇が見せてくれたあの“どきどき感”ではないのか。旧作からちょうど50年、この映画は再び素晴らしい西部劇作品として生まれ変わったのではないか。新旧双方に存在意義を残した素晴らしいタイトルとして。

モノクロの西部劇を観終わってしまった、もしくは観る動機もない人々に対して、これぞ西部劇といえる映画がどれだけ長い間生まれなかったことか。
感謝である。心から、ありがとうと言いたい。
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