ハートロッカー★★★★★

今年最も注目される映画「ハートロッカー」。
中野ZEROにて試写会。天井が高いせいでやや音響に気になるところはあったが、圧倒的な作品のパワーにすぐにのみ込まれてしまった。女流監督とは思えない異常な男臭さを放つ超絶骨太映画だ。

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イラクのバグダット郊外で任務にあたる“爆弾処理班”を徹底的にクローズアップ。
爆死した前班長の代わりにブラボー中隊へやってきた新班長が、残りの任期を全うする様を描く。
ハートロッカーとは、軍隊用語で「爆死遺体入れ」。さらに言えば“目を背けたい場所”という意味もあろう。

慎重で懸命であった前班長とは違い、無鉄砲で激情家の新班長ジェイムス。
どんなに危険な状況にも一切目を逸らすことなく立ち向かう姿はヘラクレスのようですらある。
しかし度を越えて勇敢な彼の行動に、命を共にする隊員は神経を擦り減らす。
一寸先は死の世界で、ジェイムズと隊員達は永遠とも思える時間を共有する。
日々が命の賭けである爆弾処理班。残る任期は38日。


とにかく描写が恐ろしく細かい映画である。
台詞はもちろん、爆発物の状態、解除にあたる工程、ハプニング。
爆弾を前にしたときの緊張感を細密に計算して演出している。
1つの場面にかける時間が非常に長く、かつ場面ごとの掴みが非常に巧みである。気付くと自分もイラクにいる、ということが何度もある。

爆弾解体にあたる場面がほとんどだが、直面する問題の心理的な意味合いが異なるか、もしくは問題のスケールやアイデアが異なるので飽きさせない。爆発シーンなどの要所で挿入されるスローの演出もすばらしく、リアリティを兼ね備えた映像美が成立している。

さらにこの映画最大の魅力のひとつとして、ジェイムズという人間の奥深さがある。
彼は恐れを知らない鉄の男なのか。冗談ばかりの達観した老兵なのか。そんな筈はない。
人一倍感情的な、普通の人間である。
ボンバーマンのような防護服よりも遥かに分厚い“気概”を纏って、彼は戦場に立っている。
賭けるのは自らの命。守るのはたくさんの命と信念。
「悪は暗闇に隠れている」
人間臭く繊細なヒーローを、無骨な荒くれ者というベールで包んでみせたジェレミー・レナーの演技は見事だ。

ドキュメンタリーと見紛うほどの映像/緊迫感で、物語は淡々と進む。
任期満了が近づいたとき、隊員達の間に言葉にならない共有感が生まれる。
チームワークという綺麗な言葉では括ることはできない。これは“戦争”という名の残酷な絆なのではないか。

一言で言えば、徹底的にマッドに描かれた現代戦争映画。
「ハートロッカー」は過去の戦争映画にありがちな“狂気を纏った映画”ではない。
ドキュメンタリーかと錯覚するような臨場感、斬新な構図で映し出されるアクション、葛藤の末にたどり着いた知性。その全てが合わさり、理性を伴った上で観るものを恐怖の中に引きずりこんでいく。
緊張感のある不気味な劇伴も効果的だ。

暗闇に向けて追撃するシーンなど、やや展開が乱暴な部分もある。
が、最後のドンデンがえしなまとめが素晴らしい仕掛けになっている。
38日で過酷なんて言ってる場合じゃない。戦いは今も続いている・・・。
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