フィリップ、きみを愛してる!★★★☆☆

「フィリップ、きみを愛してる!」はIQ169の実在した詐欺師をもとにした映画であり、彼がある男性を愛した記録を“人生は喜劇である”テイストに仕上げた爽快な作品である。

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両親に捨てられ、養子として育ったスティーブン(ジム・キャリー)は、生まれつきの同性愛者。妻と子を持ち、偽りとは言え幸せな生活を送っていたスティーブンだが、ある日の交通事故をきっかけに全てをカミングアウトして本来の自分らしく生きようと決意する。

あっさりと妻子を捨ててゲイ生活に没頭し、その派手(らしい)な生活を支えるために保険金詐欺を始めるのだが、やはり逃げ切れるわけもなく、テキサスの刑務所で懲役につくことになる。

そんなとき彼が出会ったのがフィリップ・モリス(ユアン)である。
少女的で優しいフィリップに一目惚れしたスティーブンは、彼のためにあらゆる手段を使って尽くし始める。彼に尽くすためならどれだけ自分の手が汚れてもかまわない!ここからはもう、とにかくスティーブンの暴走と奇跡の数々。
これが実話だというのだから驚きである。


ここからは所感だが、どうもジム・キャリーという俳優の特性と、IQ169の破天荒な天才詐欺師という組み合わせがしっくりきていないように思う。
その型破りな見栄えからして相性がよさそうな組み合わせではあるが、どうもその破天荒さを支えているものが違うように思うのだ。深い部分で繋がらない配役である。
ジム・キャリーは間違いなく天才だと思うが、このコメディよりの名俳優が演じるにはIQ169の詐欺師というテーマでさえ、少々リアルすぎたのかもしれない。
ジム・キャリーの持ち味である演技上の小ネタが非常に少なく、よさが出ているとは言いがたかった。久々に役に喰われている彼を見たというのが率直な感想だ。

そもそも、ユアン・マクレガーがゲイ役をやるというのはニュースだが、ジム・キャリーがゲイ役をやると聞いたときは少々顔が曇ったものだ。
ジム・キャリーが冗談でやるゲイネタは面白いが、本気のゲイ役というそのまんまな配役はいかがなものかと思ったからだ。
この映画には、残念ながらそうした不安が的中する部分もあるし、逆にこの場面にはジム・キャリーが必要だったと思わせる部分もある。
結局のところ+?ゼロという及第点に収まってしまった印象を受けた。
逆にユアンの少女っぷりはそこそこ見応えがあり、彼がジェダイマスターだったことなど露とも感じさせない演技だった。

正直、映画全体を通して“良くも悪くも”というのが第一印象。
ナイーブなゲイ映画なのか、詐欺師の活躍する痛快映画なのか、いずれにしてもボンヤリしており、そのどちらかにしようという気は監督にはないようだ。
それが良いほうに転んでいる面もある(ラストの奇抜などんでん返しはとてもユニーク)が、やはり作品としての輪郭が見えない印象が残る。

シーンの繋ぎがやけに軽薄で、進行が痛快な分、中身は軽め。
タイトルの良さと、絵の面白さからはじけた映画を期待していた分、ややインパクト薄となってしまった。
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